Research

【研究の背景・目的】

私人・私企業を当事者とする国際的な紛争の解決にあたっては、まずどの国の法が適用されるかを決定しなければなりません。その決定は、各国の国会が制定する法律(国際私法)によって行われますが、その方法論は多くの国(日本を含む)において未だに19世紀にドイツで確立された方法論に拠っています。無論それは徐々に洗練され、細分化して発展してきたのですが、根底にある発想は変わっていません。1950-60年代のアメリカの研究者による問題提起をのぞけば、これまで方法論をめぐる議論は低調でした。ほかの法分野では有力な法と経済学の手法が、国際私法の方法論として主張され始めたのは、ここ10年ほどのことです。

ところで、知財が企業の国際戦略において重要性を増すと同時に、その経済的価値を活用するべく、知財を担保として信用を受ける知財担保が活発化しています。ところが各国の担保法、知財法とも異なっているため、国際的な知財担保(外国の知財を担保にする、当事者の一が外国企業である等)が問題となる場合、どの法によって知財担保の諸問題を解決するか、がまず問題となるわけです。

国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)はこの問題の重要性に気付き、平成22年6月/7月の第43回会期において、知的財産担保の国際私法ルールを含む立法ガイドラインを採択しました。しかし採択された案は、会期終了直前に、専ら交渉決裂回避を目的としたものでした。知的財産担保が国際的に活用され、より多くの発明や創作、またはそれを実装した商品及び役務の社会への提供を生み出す原動力になるべきである、という観点からは、問題が多いと言わざるを得ません。これは従来型の国際私法方法論の限界を如実に示すものであり、方法論的な打開策が示されなくてはなりません。

本研究では、知的財産担保の目的に最も適合する手段は何かという発想から新たな国際私法ルールの可能性を探り、それを介して、法と経済学の手法の有用性を示したいと考えています。

【研究の方法】

担保機能をもつ取引行為、すなわち、譲渡、共有、信託、制限物権型担保、ライセンスの5つを念頭に、準拠法選択に関して、想定されるプレーヤー間のゲーム理論的なモデルを組み立て、それを展開拡張します。取引当事者の一方が知財を生み出し、他方がそれを利用するという取引関係を想定し、その当事者間の紛争の可能性を想定した場合に、事前にどのような準拠法決定ルールを定めておくことが望ましいかを分析します。その後、単独の第三者(第三者対抗要件)、複数の第三者(優先順位、競売など)の状況に拡張してゆきます。こうして得られた結論につき、資金需要側と資金供給側の両者に対してヒアリングを行い、有用性を実証します。

【研究成果】

主な業績一覧
雑誌論文:25件、学会発表:29件、図書:15件

 

Comments are closed.